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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>地域における高血圧対策を目的とした教育プログラムの実施とその効果

 高血圧は循環器疾患の中でも日本人に多い脳卒中の原因の一つです。血圧を下げるには、減塩や適量飲酒、減量が効果的であると報告されていますが、特に日本人は他の先進国に比べて食塩摂取量が多いので、減塩することは高血圧の重症化予防にとって大変重要になります。

 わが国では1980年代初頭から、老人保健法に基づく健康教室の一環として、全国の市町村で高血圧と循環器疾患予防を目的とした健康教育を実施してきました。この研究では1990年の筑西市協和町の住民健診で、血圧を下げる薬を飲んでいない最高血圧140-179mmHgまたは最低血圧90-109mmHgの35-69歳の男女111名を、最初の6か月間に4回、あとの1年間に4回の健康教室を行い指導する「集中指導群(56名)」と、この間2回だけ指導を行う「一般指導群(55名)」の2群に無作為で分けて1年半追跡し、健康教室の効果を検討しました。指導内容は減塩を中心とする食生活の改善や1日30分以上の歩行、飲酒や間食摂取制限などで、両群の対象者全員に、教室開始時、6か月後、1年半後の3回、血圧値の測定や食生活に関するアンケート、24時間蓄尿による食塩排泄量の測定などを行いました。(国際専門誌 Hypertension 1996年27巻968-974頁)

 図1はそれぞれの群の最高血圧値の平均値の変化を示しています。教室開始時は両群とも同程度でしたが、6ヶ月、1年半後には集中指導群の方が一般指導群より最高血圧値が低下していました。しかし、最小血圧値ではそのような傾向は認められませんでした。

 図2はそれぞれの群の尿中食塩排泄量の平均値の変化を示しています。教育開始時は両群とも同程度でしたが、6ヶ月、1年半後には集中指導群の方が一般指導群より尿中食塩排泄量が低下していました。

 図3ではそれぞれの群の減塩習慣の項目数の平均値の変化を示しています。教育開始時は両群とも同程度でしたが、6ヶ月、1年半後には集中指導群の方が一般指導群より減塩習慣の項目数が多くなっていました。

 さらに牛乳からのカルシウム摂取量(図なし)においても、集中指導群の方が一般指導群より摂取量が多い傾向が認められました。

 この研究結果では、健康教室での指導回数が多いと血圧を下げる効果のある生活習慣が良い状態に改善され、それに伴い、高血圧の薬に頼らなくても最大血圧値が有効に下がることが示されたことから、地域住民に対して高血圧を予防するために効果的な生活指導を積極的に行うことが、結果的には脳卒中の発症予防に役立つと私たちは考えております。





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