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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>日本人中年期における糖尿病の有病率と循環器病に
かかるリスク(1990年代から2000年代にかけての推移)

 糖尿病の有病率は、世界的に急増し、わが国においてもその発症や合併症の予防対策を講じることが社会的急務となっています。糖尿病をもつ人は、もたない人に比べて、脳梗塞を2~4倍起こしやすいことや心筋梗塞などの虚血性心疾患を1.5~4倍起こしやすいことが知られています。わが国の循環器病の最大の危険因子は高血圧ですが、近年、糖尿病患者が増加するにつれて、循環器病に対する影響力が強くなっている可能性があります。

 今回、私たちは、1990年代から2000年代にかけて、日本人中年期の糖尿病の有病率と、糖尿病による循環器病(脳卒中や心臓病)へのかかりやすさの度合いがどのように変わったかを分析しました。その結果、確かに糖尿病をもつ人が増えていること、糖尿病が循環器病のリスクを高める割合が以前より高くなっていることがわかりました。循環器病対策に占める糖尿病対策の社会的な意義が高まっているといえます。この研究の詳細を以下に紹介します。


 CIRCSの研究地域である大阪、秋田、茨城、高知の住民(40-69歳)の循環器健診受診者(循環器病の既往者を除く)を対象として、1992-95年(8,744人)、1996-99年(7,996人)、2000-03年(7,273人)でのコホートをそれぞれ約10年間追跡しました。空腹時血糖100 mg/dL未満または非空腹時血糖140 mg/dL未満の人を正常、空腹時血糖126 mg/dL以上または非空腹時血糖200 mg/dL以上または糖尿病治療中を糖尿病、それ以外の人を前糖尿病としました。

 糖尿病を有する人の割合は、1992-95年から2000-03年にかけて、4.4%、4.8%、5.6%と増加しました。前糖尿病を有する人の割合は、8.9%、8.4%、8.6%とほぼ変わりありませんでした。男女別の推移は図1のグラフの通りです。



 糖尿病をもつ人が、もたない人に比べて、どれくらい循環器病にかかりやすいかを調べるために、相対危険度(多変量調整ハザード比)を分析しました。集団全体でみた場合、糖尿病があるとどれだけ余計に循環器病が起こっているかを明らかにするために、集団寄与危険割合という指標を計算しました。

 図2の通り、糖尿病をもつ人の循環器病を起こすリスクは、もたない人に比べて、1996-99年の1.9倍から、2000-03年の2.6倍まで上昇しました。同時に、集団寄与危険割合も、1996-99年の5.6%から、2000-03年の12.4%に上昇しました。これは、1990年代後半には研究地域の循環器病の5.6%が糖尿病によって起こっていたのに対して、2000年代には12.4%が糖尿病によって起こっているということを意味します。


 1990年代から2000年代にかけて、日本人中年期の糖尿病が増え、糖尿病をもつ人が循環器病にかかるリスクが上昇していることがわかりました。糖尿病を予防する取り組みによって、最大で12%の循環器病が予防できると考えられます。生活習慣や治療の向上によって、糖尿病の予防および管理をさらに進める必要があるといえます。


 この研究結果は、Circulation Journalという医学雑誌に公表しました。


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