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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>地域住民における血液中の脂肪酸濃度と虚血性心疾患発症リスクの関係

 脂肪酸には図に示したような種類があります。肉の脂身などに多く含まれる飽和脂肪酸をたくさん摂取すると心筋梗塞になりやすく、また、魚などに多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸をたくさん摂取すると心筋梗塞になりにくいことが報告されています。しかし、血液中に含まれる脂肪酸の種類(脂肪酸分画)や濃度と虚血性心疾患との関連については明らかになっていませんでした。


 そこで、このたび、nested case-controlという方法により、国内3地域の一般住民男女を対象として、脂肪酸分画と虚血性心疾患(心筋梗塞、労作性狭心症、急性心臓死)の発症との関連について分析しました。



 1984年から1998年に茨城県協和町(現・筑西市)及び1989年から1997年に秋田県井川町、高知県野市町(現・香南市)において健診を受けた40歳から85歳の一般地域住民を11年間(中央値)追跡しました。そして、この間に虚血性心疾患を発症した152人と、性別、年齢、居住地域、血液の保存年、採血時の絶食時間が同じで、虚血性心疾患を発症していない456人とを合わせた608人を対象に、血液中の脂肪酸(飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、n-3系多価不飽和脂肪酸、n-6系多価不飽和脂肪酸及び図中の13種類の脂肪酸分画)の濃度を調べました。それぞれの脂肪酸の濃度に応じて、対照の456人を濃度の低い人から高い人へ4つのグループにわけ、虚血性心疾患を発症した人の割合を比べました。


 その結果、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸について、血液中の濃度が最も高いグループの虚血性心疾患発症のリスク比は、最も低いグループに比べ2倍以上でした。特に、飽和脂肪酸のうちミリスチン酸、パルミチン酸で、一価不飽和脂肪酸のうちパルミトレイン酸で、虚血性心疾患のリスク比が顕著に高くなっていました。


 また、n-3系多価不飽和脂肪酸では虚血性心疾患発症との関連は見られませんでしたが、n-6系多価不飽和脂肪酸では、血液中の濃度が最も高いグループの虚血性心疾患発症のリスクは、最も低いグループに比べ約60%下がり、特にリノレン酸で虚血性心疾患発症の予防効果が顕著に認められました。



 海外の研究では、血液中のn-3系多価不飽和脂肪酸濃度が高い場合に、虚血性心疾患の予防効果があったことが報告されていますが、日本人を対象とした今回の研究では、関連は認められませんでした。これは、もともと日本人では欧米人と比べ魚に豊富に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いこと、またn-3系多価不飽和脂肪酸の虚血性心疾患の予防効果は、ある一定量以上では同じである可能性が考えられます。


 食事中の脂肪酸がそのまま血液中に反映されるわけではなく、食事中の脂肪酸は、体内に吸収される際に、分解、合成され血液中に入るため、特定の脂肪酸に偏らず、バランスよく食べることが大切です。

 本研究の結果はCirculation Journal 2018;82:3013-3020に公表されました。


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